| 「悟浄って甘えたがりでしょ」 普通に会話してて、どこからそんなこと思いついたんだってくらい、突拍子も無く口にされた言葉の意味を図りかねて、思考が止まる。 「なんだそりゃ」 かろうじて言葉にできても、バカみたいに見当はずれな答え。 「でしょ」 断定してくる口調が妙に自信ありげで、なんとなくうろたえる。 「んなコトねぇよ」 「そう?」 「ああ」 「ふーん?」 やけに含みを持たせるじゃねーか。 「なんだよ」 苛ついてぶっきらぼうに問い返す。
だけど、何も言ってこない――。
「何が言いたいんだよ、それで」 煙草をゴミ箱に放る。 「別に。何か言いたいのは悟浄のほうなんじゃないの?」 すました顔が、小憎らしい。
「…可愛げのねぇ女」 「あら、お褒めに預かり光栄だわ」 変わらねぇ表情と口調がうろたえる俺をバカにしてるみてぇだ。
「そこが可愛くねぇって言ってんだよ」 憎まれ口にもお前は動揺しないってのはわかってるのに、ホント、バカみてー。 「あ、そう」 「ホント可愛くねぇ」 むっつりと俺はむくれる。 「――で、俺が甘えたがりだったらどうだっていうんだよ」 「? ただそうだなって思っただけ」 なんだそりゃ。
「そうだったらどうなんだ? 甘えさせてくれんの?」 からかってやれ。 なのに。 「甘えたいの?」 聞かれて、思考が止まった――。 誰もンなコト言ってねぇ、 引き寄せられた両腕の中、肌に直に響く鼓動。
「っい…――」 「よしよし」 ぽんぽんとあやされるように優しく叩かれる背中。
「――ガキじゃねぇんだよ」 気恥ずかしくてもどういうわけだか振り解けない。
「回りくどいのよね、悟浄って――」 「あァ?」 視線だけ上にあげて見れば、微笑っていやがる。 「口説き文句、あれ、遠回しだけど“甘えたい“って言ってるでしょ」 「――言ってねェよ」 「言ってるのよ、全身で。甘えたいって。そう、聞こえる」 空気を震わすまでもなく、声が直に届く。 「そりゃおまえの聞き間違いだ」 離せ、とか言えなくて、というより言いたくなくて、ただじっと抱かれたまま。 「そう?」 「ああ」 「…やっぱ違うよ」 あん? 「悟浄の“抱きたい”って“抱かれたい”だと思うから」
「・・・・・・ッカじゃねェの?」 ンなワケねぇよ。 それはきっと、あまりにもおまえがあったかいからだ。 気づかなくても良かったんだよ――。 沈めてたんだよ、ずっと、ガキの頃から。
あの人に
あたたかく
抱きしめられたい
――なんて。
だって、ンなこと言えるワケなかったし、 あの人の、
ガキのようにただ抱きしめられる。 「いいんじゃない、たまには素直に甘えたいって言ってもさ」 ひねくれもんにはそれが難しいんだよ。 呟いて目を閉じた。 でも、そうだな――。 ちらりと見上げて、いつのもようににやりと笑う。 「じゃあさ、今から俺をイかせてくれる?」
微笑が引き攣った。 「却下」 ぽんっと投げ出されるように解放される。 「素直になれって今言ったじゃん」 「嘘、今の絶対素直じゃなかった!」 「俺の一番素直な思いを嘘とか言うか、ふつー」 「素直にってのは、あけすけにって意味じゃないわよ」 「んじゃおまえが嫌いっていう遠回しな口説き文句でも使おうか?」 「……悟浄って、んっとに可愛くないわねぇ」 「誉めてくれてアリガトウ」 「うっわ、カワイクなーい」 「いいの、俺、男の子だモン」 かわいくなーい!って笑うおまえ。 俺、ひねくれてるから。 「なァ?」 振り返ったおまえ。 「もうちょっとだけ抱きしめてくれない?」 本音を言えば、抱キタイ抱キシメテホシイ、なんだけどな――。 |
| はい、一人だけ後からアップ、悟浄編でした。タイトルがすでに恥ずかしい。 冒頭部分だけは3人と一緒の時期に作ってましたが、どうしてもその後が続かず、今ごろになってしまいました。 みんなそれぞれに原作の一部を使わせてもらってます。 なんか……保母さんに憧れる男の子の気持ちがわかりました(笑) 2003.10.15 |
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